
こんな悩みはありませんか?
- 転職先は見えてきたのに、上司に「辞めます」と言い出せない
- 強く引き止められたら、断り切れる自信がない
- 退職の手続きにどれくらい時間がかかるのか分からず、面接で入社時期を聞かれたら何と答えればいいか迷っている
- 予備自衛官を続けたいけれど、転職先に言っていいのか分からない
転職活動というと、書類や面接の対策ばかりに目が向きがちです。ですが、相談を受けていると「内定が見えてきた段階で、自衛隊の辞め方で悩み始める」という方がとても多いんです。
はじめまして。私は航空自衛隊に17年勤務し、現在は外資系企業で管理職として働いています。これまで150人以上の自衛官の方から転職の相談を受けてきました。私自身も35歳で自衛隊を辞める決断をした一人です。
この記事では、実際の相談の内容をもとに、自衛隊を辞めるときの「引き止め」にどう向き合えばいいのか、円満退職のために何を準備しておけばいいのかを具体的にお伝えします。
結論:引き止めは「来るもの」と想定し、「死守すること」と「譲っていいこと」を先に決めておく
先に結論をお伝えします。自衛隊を辞めるときの引き止めは、「あったらどうしよう」ではなく「あるもの」として準備しておくのが正解です。
そのうえで大切なのは、次の3つを退職を切り出す前に決めておくことです。
- 退職の意思と理由:「相談」ではなく「決めたこと」として伝えられる状態にしておく
- 死守すること:基本的には「退職予定日」。ここだけは譲らない
- 譲っていいこと:ボーナスの算定や有給休暇の取り方など、退職日を守るためなら手放せるもの
全部を自分の思いどおりにしようとすると、交渉が長引き、結果的に一番大事な「退職日」まで崩れてしまうことがあります。逆に、守るものを1つに絞っておけば、話し合いの場でも気持ちがぶれにくくなります。
相談の中でこんなケースがありました
ある20代の自衛官の方から相談を受けたときのことです。目指していた道が閉ざされたことをきっかけに、もともと心の中にあった「民間で挑戦してみたい」という気持ちが強くなり、転職活動を始めた方でした。
ちょうど相談の当日に、第一志望の企業から書類選考通過と面接の案内が届いたところで、話題は自然と「面接で何を聞かれるか」だけでなく、「受かったら、どうやって自衛隊を辞めればいいのか」に移っていきました。
この方が特に不安に感じていたのは、次の3つでした。
- 上司に退職を伝えたとき、引き止められて断り切れるか
- 退職の手続きにどのくらい時間がかかるのか、面接で入社時期を聞かれたら何と答えるか
- 予備自衛官を続けたいことを、転職先に伝えるべきかどうか
どれも、転職を考える自衛官の方からよく聞く悩みです。ここからは、この方にお伝えした内容をもとに、一つずつ解説していきます。
なぜ自衛隊の引き止めは強いのか
中堅の人材が足りていないから
部隊によって差はありますが、現場では30代手前から40代半ばくらいの中堅の人材が慢性的に不足していると言われています。ちょうど仕事を覚えて、後輩の面倒も見られるようになった世代です。
上司からすれば、その世代の隊員が抜けることは「戦力が一人減る」以上の痛手です。だからこそ、「もう少し頑張ってみないか」「今辞めるのはもったいない」と、本気で引き止めにかかります。上司個人に悪気があるわけではなく、組織として引き止めざるを得ない事情がある、と理解しておくと、少し冷静に向き合えるはずです。
「明確な理由」がないと、説得されやすいから
家族の介護やケガなど、誰が見ても続けるのが難しい理由がある場合は、話は比較的スムーズに進みます。一方で、「民間で挑戦したい」「自分の道に進みたい」という前向きな理由の場合は、「それなら自衛隊の中でもできる」と説得の余地を与えてしまいがちです。
ここで意思が揺らいでいると、話し合いのたびに少しずつ押し戻され、気づけば「もう1年だけ」と残ってしまう。相談の現場では、これが一番避けたいシナリオだとお伝えしています。ケースによっては、直属の上司だけでなく、さらに上の立場の方が直接話をしに来ることもあります。
退職の手続きに時間がかかることがあるから
もう一つ知っておいてほしいのが、退職手続きにかかる時間です。部隊や時期によっては、退職の手続きをある程度まとめて処理することがあり、タイミングが合わないと次の処理まで待つことになります。時期によっては、半年以上かかるケースもあります。
民間企業では「1か月前に伝えて退職」ということも珍しくありませんが、自衛隊は同じ感覚では動けません。転職先との入社日の調整にも関わってくるので、早めに見通しを立てておくことが大切です。
円満退職のための準備4ステップ
ステップ1:退職の意思を「相談」ではなく「決定事項」として伝える準備をする
自衛隊では、日頃から上司に報告・相談をしながら物事を進めるのが当たり前です。そのため、退職についても無意識に「辞めようか迷っているのですが……」と相談の形で切り出してしまう方が少なくありません。
例えば、「民間に興味があって、少し考えているんです」と伝えると、上司は「じゃあ考え直す余地がある」と受け取ります。一方で、「〇月末で退職させていただきたいと考えています。理由は〜です」と伝えれば、話し合いの出発点が「辞めるかどうか」ではなく「どう辞めるか」になります。
伝える前に、なぜ辞めるのか、辞めて何をしたいのかを自分の言葉で1〜2分で話せるようにしておきましょう。意思と理由が固まっていれば、引き止めの言葉を受けても「ありがとうございます。それでも決めたことなので」と落ち着いて返せます。
ステップ2:「死守すること」を1つに絞る
引き止めや調整の場では、さまざまな条件が話題に上がります。そのすべてで自分の希望を通そうとすると、交渉が長引き、肝心なところで押し切られてしまいがちです。
だからこそ、「これだけは譲らない」ものを1つに絞っておきます。多くの場合、それは退職予定日です。転職先の入社日が決まっている以上、退職日がずれれば、せっかくの内定にも影響しかねません。
自衛隊の作戦や訓練の計画でも、「ここだけは外せない」という目標を決めて、そこから逆算して他の条件を調整しますよね。退職も同じで、守る一点を決めておくと、他の判断がぐっと楽になります。
ステップ3:「譲っていいこと」を先に決めておく
死守することを決めたら、その反対に「退職日を守るためなら手放してもいいもの」も先に決めておきましょう。例えば、ボーナスの算定に関わる時期や、有給休暇をどれだけ消化するかといった点です。
もちろん、受け取れるものは受け取りたいのが本音だと思います。ですが、「ボーナスまで待ってから」「有休を全部消化してから」と条件を重ねるほど、退職日は後ろにずれ、その間に引き止めの話し合いが何度も繰り返されることになります。
何を譲れるかは、転職先の状況や今の職場環境によって変わるので、正解は一つではありません。大切なのは、話し合いの場で初めて考えるのではなく、事前に自分の中で線を引いておくことです。
ステップ4:転職先とは「余裕を持った入社時期」で調整する
面接では、ほぼ確実に「いつから入社できますか?」と聞かれます。ここで民間の感覚に合わせて「1〜2か月後には」と答えてしまうと、実際の手続きが間に合わず、転職先にも迷惑をかけてしまいます。
相談の中では、先輩方の事例も踏まえて「3か月程度」と伝えておけば、大きく外れることは少ないとお伝えしています。早く入社できる見込みが立てば、そのときに前倒しを相談すればいいだけです。
また、退職日を月末にこだわる必要はありません。民間企業では給与の計算期間に合わせて「1日入社」とするのが一般的なので、転職先の締め日を確認したうえで、退職日と入社日を調整するとスムーズです。
面接で迷いやすい「予備自衛官」の伝え方
退職後も予備自衛官を続けたいと考えている方は多いと思います。ここで迷うのが、「転職先にいつ、どう伝えるか」です。
結論から言うと、面接の段階で伝えておくのが最善です。企業によっては、予備自衛官の活動が副業禁止の規定とどう関わるのか、判断が分かれることがあります。入社後に分かると「聞いていた話と違う」と受け取られ、信頼を損ねてしまうおそれがあります。
伝えるときのコツは、「副業をしたい」という言い方ではなく、予備自衛官という制度の仕組みや、年間どのくらいの日数が必要になるのかを丁寧に説明したうえで、先方の考えを確認することです。予備自衛官を雇用する企業向けの給付金の制度もありますが、人手が抜けること自体はお金では解決できないので、企業側の懸念にも配慮した伝え方を心がけましょう。
そして、もし先方から「難しい」と言われた場合に自分はどうするのかも、事前に考えておくことが大切です。その場で慌てずに答えられるかどうかで、面接官の受け取り方は大きく変わります。
見落としがちな注意点:応募先が1社だけになっていないか
先ほどのケースの方は、相談の時点で応募しているのが第一志望の1社だけでした。第一志望に全力を注ぐのは素晴らしいことですが、もし選考がうまくいかなかった場合、転職活動を一からやり直すことになります。
そうなると、「やっぱり自衛隊に残った方がいいのかな」という気持ちが顔を出し、引き止めにも弱くなってしまいがちです。気持ちに余裕を持って退職の話し合いに臨むためにも、選択肢が1つしかない状態はできるだけ避けておくことをおすすめします。
まとめ
自衛隊を辞めるときの引き止めは、組織の事情から見ても「起きて当然」のものです。だからこそ、その場の空気で決めるのではなく、事前の準備で結果が大きく変わります。
- 退職の意思と理由を固め、「相談」ではなく「決めたこと」として伝える
- 死守することは「退職予定日」の1つに絞る
- ボーナスの算定や有休消化など、譲っていいことを先に決めておく
- 転職先には「4か月程度」と余裕を持った入社時期を伝え、1日入社で調整する
- 予備自衛官を続けたい場合は、面接の段階で制度を丁寧に説明しておく
退職は、自衛官としてのキャリアの「最後の任務」のようなものです。お世話になった職場への感謝はきちんと伝えつつ、自分の決めた道へ進むための準備を、一つずつ進めていきましょう。
一人で抱え込まず、まずは話してみませんか
「引き止められたら、きっと断り切れない」
そう感じている方は、決して少なくありません。相談の現場でも、内定が見えてきた方ほど、この不安を口にされます。
私自身も民間に出てから、言葉の意味や略語が分からない、仕事の進め方がまったく違う、今日決めたことを今日から全部変えるほど意思決定が速い……と、自衛隊の「当たり前」が通用しない場面に何度も戸惑いました。辞め方も同じで、自衛隊の中にいるうちは、民間の感覚との違いに気づきにくいものです。
辞め方や伝え方の悩みは、周りの同僚にはなかなか相談しにくいものです。だからこそ、一人で抱え込まなくて大丈夫です。まだ転職を決めていない段階でも、もちろん構いません。
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