【恐怖】「解雇規制緩和」が再就職/転職自衛官を破滅に導く…『4つの恐怖とワケ』

はじめに

近年、政府や経済界では「解雇規制緩和」の議論が進んでいます。
これは一部の企業や労働者にとってメリットとなるかもしれませんが、自衛官にとって、特に自衛隊を定年退官あるいは中途退職で去った後に、大きな打撃を与える可能性があります。
この記事では、解雇規制緩和が自衛官にどのような影響を与えるのか、その理由を4つに分けて解説します。
特に、解雇規制の緩和が進む中で、安定した職場を離れるリスクをどう考えるべきか、どう対処すべきか、本記事ではその点に焦点を当てます。

こんな人にオススメ

  • 自衛隊を退官後、民間企業で働くことに不安を感じている30代~50代の自衛官
  • 解雇規制緩和が自分にどのような影響を与えるのかを知りたい方
  • 将来のキャリア構築に不安を感じている現役の自衛官

この記事でこんなことがわかります!

  • 解雇規制緩和が自衛官に与える影響
  • 自衛官が陥りやすいキャリアの落とし穴
  • 解雇規制に負けないためのキャリア戦略

「解雇規制緩和」が自衛官に与える影響4つの恐怖とそのワケ

まずはじめに八木自身が考える、「解雇規制緩和によって、自衛官が感じる『4つの恐怖』」についてお伝えします。

1. 「職を失う」恐怖感との戦い

まず解雇規制緩和が進むと、解雇されるリスクが高まります。
自衛隊では、職務を全うすれば定年まで雇用が保証されることがほとんどです。
しかし、民間企業では解雇が容易になるため、常に「職を失うかもしれない」という恐怖感と戦わなければなりません。

この恐怖感は、特に50代以上の自衛官にとって大きな精神的なプレッシャーとなります。
なぜなら年齢を重ねるほど再々就職が難しくなるため、一度解雇されると再び仕事に就くのが困難な状況が現実味を帯びてくるからです。

特に定年が延長され、56歳以上になると再就職そのものが非常に困難になる可能性があります。

自衛官のときには感じなかった恐怖感です。

2. 流動性の高い市場への不安感

自衛隊における配置というのは、組織が勝手に決めてくれますし、もし部隊再編で配置がなくなったとしても、次の配置を組織が用意してくれます。
しかし、解雇規制緩和が進み、民間企業は労働力を柔軟に配置しやすくなった以降に、定年退職や転職で民間企業に進むと、自分で自分のキャリアを構築していかなければなりません。

自衛官として長年勤務してきた人にとって、こうした急激な変化は不安材料となります。
特に、民間の労働市場を実際に体験したことがない人にとっては、その不確実性が恐怖となることがあります。
自衛隊内での配置のされ方に慣れきってしまうと、民間での不安定な働き方に順応できないことが多いのです。

3. 専門性の欠如による焦り

自衛隊内でのキャリアは、非常に特化されたものであることが多いです。
例えば、危機管理やリーダーシップ、特定の装備品の技術に精通していることは、自衛隊内では評価されるスキルですが、民間企業ではそれが直接役立つかどうかは保証されていません。

解雇規制緩和が進むと、企業はより専門的なスキルを持つ従業員を求める傾向が強まります。一般的に「ジョブ型雇用」と呼ばれている専門性の高い配置が増え、「幅広く活躍できる人材」はどんどん淘汰されていきます。
そのため、自衛官は民間に出た際に、自分のスキルが評価されないのではないかという焦りを感じることが増えるでしょう。

その焦りからムダな資格取得に走ってしまったり、自分の市場価値を落としてまで経験を積むことを優先してしまったりして、負のスパイラルに陥る可能性があります。

暗中模索の状態になるはずです。

4. 「ジョブホッパー」としての没落感

さらに、解雇されるリスクが高まると、短期間で複数の会社を転職する「ジョブホッパー」としての道を歩む可能性が高まります。
自衛隊では、長期間同じ職場で働くことが前提とされていますが、民間企業では解雇が増えると転職回数が増えます。
特に高齢になってから何度も職を変えることは、自己評価を下げ、没落感を強く感じる要因となりかねません。

以上、解雇規制緩和が進んだあとの自衛官が感じる4つの恐怖について、述べてきました。
ではこれらの状況にどのように対応していけば良いのでしょうか?


そもそも「解雇規制緩和」って?

対策について考える前に、まず「解雇規制緩和とは何か」を理解しておきましょう。
日本では、企業が労働者を解雇する際、以下の4つの要件を満たさなければなりません。

  • 整理解雇をして人員を削減する必要があったか
    企業が経済的な理由で人員削減を行う場合、その必要性が認められることが前提です。
    例えば、業績不振や経済的危機があり、やむを得ず従業員を解雇しなければならない状況です。
  • 整理解雇をする前に解雇を回避する努力をしたか
    企業は従業員を解雇する前に、他の方法で解雇を回避する努力を求められます。代表的な例は配置転換です。特に、日本のように、新卒入社してから、いろんな部署を経験する「メンバーシップ型」雇用をしている企業は、解雇を回避するために配置転換をする必要があります。
  • 解雇をする人員の選定に合理性があるか
    解雇される従業員の選定には、合理的な理由が必要です。例えば、長期的にパフォーマンスが低下している従業員などです。
  • 従業員との間で十分な協議がつくされたか
    解雇に至るまでに、従業員との間で十分な協議が行われ、納得のいく形で進められているかが問われます。協議不足や一方的な決定は、不当解雇として訴訟の対象になることがあります。

解雇規制緩和が進むことで、これらの要件が緩和され、企業がより自由に従業員を解雇できるようになります。
特に、自衛官のような公務員経験者にとっては、民間企業での働き方が大きく変わることを理解しておかなければなりません。

あなたが選ばれる可能性ももちろんあります。

解雇規制緩和と切って切れない「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」って結局ナニ?

メンバーシップ型雇用とは?

解雇規制緩和について話す際に、欠かしてはならないのが、「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」です。この「ジョブ型雇用」は企業にとって、利益が出やすい雇用形態のため、今後ますます主流となることが予期されます。

まず、日本の企業では「メンバーシップ型雇用」が長らく主流です(自衛隊もこれです)。
この雇用形態は、従業員が企業の「メンバー」として長期的に所属し、定期的な昇進や異動を通じてキャリアを形成していくものです。具体的には、以下の特徴があります。

  • 長期雇用:一度採用されれば、定年までの雇用が保証される傾向が強い。
  • 総合職採用:特定の職種に限らず、会社全体でさまざまな業務を経験する。
  • 昇進・昇給:年功序列が基本で、勤続年数が長くなるほど昇進・昇給の機会が増える。
  • 職務の幅広さ:職種が固定されず、会社のニーズに応じてさまざまな部署に異動する可能性がある。

このようなメンバーシップ型雇用は、自衛隊の雇用形態にも当てはまります
自衛隊では、入隊後に同じ組織内で定期的な異動や昇進を経験しながら、さまざまな役割をこなしていきます。長期的に組織全体に貢献することが求められ、専門性というよりも総合的な能力が重視されます。
自衛隊員もまた、このメンバーシップ型の枠組みの中で、安定したキャリアを積み上げていくことが前提です。

しかし、解雇規制緩和が進む中で、このメンバーシップ型雇用の安定性が崩れます。
企業が従業員を自由に解雇できるようになると、勤続年数や総合的な貢献ではなく、個々の職務に対するパフォーマンスが重視されるようになります。
自衛隊員にとっても、退官後に民間企業での就職を考える際には、この変化に対応する必要があります。


ジョブ型雇用とは?

一方、日本以外の企業では「ジョブ型雇用」が主流です。これは、特定の職務に従事するために採用され、その職務を達成することが求められる雇用形態です。ジョブ型雇用の特徴は以下の通りです。

  • 職務内容が明確:採用時に具体的な仕事内容が決められており、その職務を全うすることが期待される。
  • 短期雇用の可能性:特定のプロジェクトや業務が終了すると、契約が終了することもある。
  • 専門性の重視:特定の分野における高度な専門スキルが求められる。
  • 業績評価:職務に対する成果やパフォーマンスが評価の基準となり、昇進や昇給が決まる。

ジョブ型雇用では、従業員は自分の専門分野に特化し、その分野での成果を上げることが重視されます。これにより、企業は必要なスキルを持った人材を即戦力として雇い、不要になれば解雇することが容易です。日本でも、グローバル企業や外資系企業がこのジョブ型雇用を導入するケースが増えています。

自衛隊ではジョブ型雇用はされていませんが、強いて自衛隊で例えるなら、以下のように例えられるでしょう。

・第9航空団整備補給群司令が定年退官を迎えた。
→「第9航空団整備補給群司令」のポジションが空く。
→「第9航空団整備補給群司令」のポジションを埋めるために、部内/部外から人を募集する。
→募集をする際は、「第9航空団整備補給群司令」の職務内容が具体的に記載された詳細が公開される。
→「第9航空団整備補給群司令」の採用をする。
→「第9航空団整備補給群司令」の採用をし、1年が経過したが、所望の結果を満たすことができなかった。
→「第9航空団整備補給群司令」を解雇し、新たな応募者を募る。

といった感じです。

キーポイントは「専門性」です。

今後メンバーシップ型とジョブ型のハイブリッド化が加速

近年、日本でもメンバーシップ型雇用とジョブ型雇用のハイブリッドな形での採用が進んでいます。
企業は、特定の職務やプロジェクトに高い専門性を求めるポジションにはジョブ型雇用を導入し、それ以外の幅広い業務を担当する人材には従来のメンバーシップ型雇用を維持するようになってきています。

  • ジョブ型雇用は、特に管理職高度な専門技術を要するポジションに限定される傾向があります。例えば、IT技術者やプロジェクトマネージャーなど、特定の職務に高度なスキルを求められる役割がジョブ型雇用の対象となります。これにより、専門性が重視され、即戦力としての人材が求められるため、成果が明確に評価される仕組みとなります。
  • メンバーシップ型雇用は、基本的に新卒採用者に限定される傾向があります。新卒で採用された社員は、長期的に企業内で育成され、さまざまな部署を経験しながらキャリアを形成するという従来の日本的な働き方が引き続き採用されます。これは、総合職としてのキャリア形成を重視するものであり、企業全体に貢献する能力を高めることが期待されます。

こうしたハイブリッド型の雇用形態が広がることで、日本企業でも個々のスキルと組織全体への貢献がバランスよく評価される仕組みが整ってきています。
このような変化は、自衛官が民間企業に転職する際にも影響を与える可能性が高く、自衛官として培った専門スキルをどのように活かすかが、転職後の成功を左右する重要な要素となります。


解雇規制緩和に負けないキャリアを現役自衛官のうちに構築するには?

自衛隊で培った専門性は大事にしよう

自衛隊での経験は、非常に特殊であり、他の職場で容易に代替できるものではありません。
危機管理能力、リーダーシップ、マネジメントスキル、プロジェクト管理やそれぞれの特定の分野の技術や知識など、自衛隊ならではのスキルは民間でも評価される場面が多々あります。
これらのスキルを「自分にしかできない価値」として理解し、それをいかにして民間の仕事に応用できるかを考えることが重要です。

例えば、災害対応や緊急時の判断力、限られたリソースの中で状況を的確にコントロールする能力は、企業のリスク管理部門やプロジェクトマネジメントなどで高く評価されます。自衛隊で培った専門性を意識し、その価値を民間の職務にどう活かせるかを考えておくと、転職活動での大きな強みになります。

専門性をさらに深めるための勉強をしよう

民間企業で求められるスキルは、自衛隊での経験だけでは十分ではないこともあります。
自分自身が学んできた経験や知見をさらに拡大するような講座やセミナーを探しましょう

民間でのジョブ型雇用に対応するためにも、現役の自衛官のうちに、スキルのアップデートを継続し、自らの市場価値を高める努力をしましょう。特に、解雇規制緩和が進んだ社会では、専門性があればあるほど、解雇されにくくなります。

こうした準備を怠らないことで、解雇規制の緩和に直面しても、安定したキャリアを築くことができるでしょう。


結論:早めのキャリア準備がカギ

解雇規制緩和は、自衛官にとって大きな不安をもたらすかもしれませんが、現役時代から適切な準備を行えば、そのリスクを最小限に抑えることができます。
自衛隊でのスキルを活かしつつ、常に市場のニーズに合わせて自己研鑽を続けることが大切です。自らのキャリアをしっかりとデザインし、どのような状況にも対応できるよう備えましょう。

おわりに、今すぐ行動を起こし、自衛官としての強みを再確認することが、将来のキャリアに大きな影響を与えるでしょう。将来の不確実性に対処するために、今できる準備を始めましょう。

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