【本音】自衛隊を退職するとき「罪悪感」感じた?どうやって乗り切った?

結論から言うと、罪悪感だらけでした。
そもそも「自衛隊を辞める」という選択肢すら、自衛隊の中ではタブー視されています。
そんな状況に加え、私にはさらに罪悪感を増すような状況がありました……。

私の場合、父も自衛官で、同じく防衛大卒。
そこまで大きな出世をしたわけではありませんが、定年時には1佐でした。
父は指揮幕僚課程には入校しなかったため、父もそうですが、母も私がCSCに入ったことをすごく喜んでくれていました。
応援してくれていた両親の期待を裏切るのは心苦しく感じていました。

また、当時の部下や学生たちは、指揮幕僚課程を履修したばかりの八木がもっと出世することを期待してくれていたと思います。
その期待を裏切ることへの罪悪感は確かにありました。
特に当時は、幹部候補生学校で中隊長を務め、防大・一般大課程の課程主任として、初めて防大と一般大が同じ課程を履修する年を迎えていました。上司の隊長や学校長からも、その課程を成功させることを大いに期待されていたと思います。
さらに追い討ちをかけるような状況が続きます。
2月に担当している課程が修了するにも関わらず、内定をもらったのは10月で、新しい職場からは「12月1日には出勤してほしい」旨連絡を受けていました。
そうなると、「課程主任が課程の途中で退職する」という前代未聞な出来事が起きてしまうわけです。当然代わりはいないので、課程主任不在で、残りの期間を乗り切ってもらわないといけない。これは部下や後輩たちに多大な迷惑をかけてしまう……。
けど、チャンスは一度きり。「グローバルに活躍する人材になりたい」という夢を叶えるチャンスを手に入れている状態。
そんな状況を抱えていました。カンタンにまとめると、

・父も防衛大卒の官品。
・指揮幕僚課程を卒業したばかりで周囲の期待大。
・防大・一般大を併せた初の課程の課程主任。
代わりなし
・退職するなら、課程主任が途中で辞めるという前代未聞の大事件。

孤立無援だな、と感じていました。

私が退職を決断したときの話をする前に、少し話は逸れますが、私は20代のときから思っていたことがあります。

それは
「自衛官は軍人なんだから、戦争でいつ死ぬか分からない。
だから誰かが急にいなくなってもなんとかしなければならない。」
ということです。

そうは言っても、自衛隊の職場は大変多忙です。
ですが、大変と言っても、戦争も何もしていない「平時」です。
これが戦争になったら、いったいどれだけ忙しくなるのだろうと思っていました。
よく部隊で冗談めかして、「もし戦争が起きたら戦場より先に、過労で死人が出る」と言っていたくらいです。

しかしながら、「結局は何とかなる」という出来事がおこります。
それが、東日本大震災です。
あのときは、部隊の4分の1の人がいなくても部隊は回っていました。
年度末でさまざまな報告や文書作成を抱えていたにも関わらず、です。
このことから、「人が多少いなくなったくらいで『部隊が回らない』なんてことは起きない」ということに確信を持っていました。
その後も現場の隊員から「彼がいないと部隊が回らない」という意見が挙がってくるたびに、「大丈夫、彼がいなくなったら代わりの誰かが成長する」と伝えてきました。(実際に思ってもみなかった人材が急成長するから不思議なものです……。)

結局、この「重要な誰かがいなくても部隊はなんとかなる」という思いもあって、課程の途中である11月末に退職することを決意しました。
退職の申し出をきっかけに反感を買うと思っていましたし、「課程主任なのに無責任」と責められることを覚悟していました。

ですが、実際には思った以上に温かい反応をもらいました。
学生たちは独自に送別行事を企画してくれ、全員の寄せ書きが書いてある色紙をもらい、胴上げまでしてくれました。
当時の上司からは高級ボールペンを頂き、部下たちからも同じく高級ボールペンや名刺入れをプレゼントしてもらいました(今でも大切に使っています)。
きっと彼らの中でも葛藤や怒り、裏切られた感情があったと思います。それを微塵も感じさせずに、見送ってくれたことは本当にありがたいと思います。
また、辞めた後も、同期たちが「東京で飲むから来い」と定期的に連絡をくれます。本当に恵まれているな、と感じます。

つながりは無くなりませんでした。

ただ、同じように自衛隊を辞めた仲間の中には、疎遠になってしまった人もいます。
その違いを考えたときに思うのは、「辞める理由を明確に伝えたかどうか」だということです。
理由が曖昧だと、連絡を取るのもどこか気まずくなってしまいます。
でも、はっきり理由を伝えてくれると、その決断を応援したくなりますよね。
私の場合、課程主任という立場もあって、辞める理由をしっかり伝える必要があったので、今振り返るとそれが幸いだったのかもしれません。

もしあなたが「自分が辞めることで周りに迷惑をかけるかもしれない」と思っているなら、「だいじょうぶ」と伝えたいですし、結局その決断をするのはあなた自身です。
周りの人に配慮することは大事ですが、周りの人はあなたの人生の責任は取ってくれません。あなた自身が後悔しない生き方をすることを私はオススメします。
退職に迷っているあなたの参考になれば幸いです。

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