【本音】自衛隊を辞めて民間に転職する決心したとき考えていたこと

自衛隊を辞める決断をしたのは、2020年9月の半ば頃、コロナ真っ只中でみんなが外出を控え、土日の観光地も閑散としていたとき、そして、まだ夏の暑さが残る頃だったかもしれません。

転職活動が少しずつ軌道に乗り、世界最大手の外資系企業からスカウトを受けた時、もしこの会社に受かったら、自衛隊を辞めてもいいかもしれない、でも外資系は少し怖いな…と不安を感じていました。

外の世界を知らない自衛官としては、「外資系企業」というと、すぐに首を切られる場所という印象が強かったからです。実力主義が徹底されていて、ゴールや目標が設定されれば、その達成が求められる。達成できなければ、そこで終わり。そんな厳しいイメージを持っていました。

他方で、2020年時点で、すでに自衛隊での自分自身のキャリアのゴールは見えていました。
そのため、「もっと活躍できる場所がほしい!」「グローバルに活躍できる人材になりたい!」と思っていました。ところが、実際に実力が求められる「外資」という単語を目の前にして、ビビっていた自分もいました。

ところが、実際に面接を受けてみると、そうした怖さはあまり感じませんでした。
確かに実力主義であることに変わりはないし、成果も求められますが、その達成のためのプロセスはシンプルで理解しやすいものでした。面接をした4名の方はいずれもフランクで、割とあけすけに自社のメリットとデメリットを語ってくれました。
そして、自分がその場所で働くイメージなんかもだんだん明確になってきました。最後の面接では、「もう聞きたいこと全て聞き終わっちゃったから、残り20分雑談にしよっか」と言われたので、自分が抱えている不安なことを割とぶっちゃけて聞いてみました。そうすると自分の不安の8割は起こらない、ということがだんだんとわかってきました。
面接を重ねるごとに好印象を抱き、最終的に内定が出るまでの1週間、何となく「これは受かったな…」という感覚がありました。

内定が出る前に、『これは真剣に自衛隊を辞めることを考えなければならない』と思いました。
正直それまでは、まったく内定をもらえなかったため、本当に自衛隊を辞めて、民間に行くことをリアリティをもって想像していなかったからです。(そもそもそんな気持ちで転職活動をしていたのか、とあとになって思えば軽率な感じもしますが…)

検討に際しては、

  1. 生涯賃金:
    年収100万円ダウンまではOK、それ以下なら×
  2. 今後のキャリア:
    会社を去ることになったとしてもその後生き抜くキャリアが構築できるか
  3. 居住地:
    なるべく妻の実家が近い関西圏で
  4. 海外で仕事ができるか否か:
    将来的には海外で仕事をしてみたいという希望から
  5. 家族との時間:
    ハードワークなのはウェルカム。ただし、単純に残業時間が多いだけ、というのはNG。

自衛隊を続けて将来得られる収入・退職金と外資に行って得られる年収(いくら以上なら良いのか)を比較してみたり、転職で実現したかった条件(活躍チャンスがあるか等)が整っているかどうかを天秤にかけました。

もちろん妻にも相談し、2人の幼い子供(当時4歳と1歳)が寝た後、メリットとデメリットを並べて検討する日々が続きました。妻としては、『子供が育てられるだけの収入があるならそれで良いと思うし、あなたがチャレンジしたいなら応援する』と背中を押してもらいました。

最終的な決断に至ったのは、『もう死ぬ』というタイミングで人生を振り返ったとき、自分の人生を後悔しないか、という判断軸です。

「もし今日が人生最後の日だったら、今やろうとしていることを本当にやりたいだろうか?」
(If today were the last day of my life, would I wanna do what I’m about to do?)

Appleの創業者スティーブ・ジョブズの言葉です。

この言葉は、この言葉を知った20代中頃から、ずっと僕の心に刺さっていました。

今の自衛隊の仕事を続けることで、死ぬ時に後悔しないだろうか。

どうせゴールの見えている環境のなかで、一生懸命がんばる価値はあるのか。

収入が安定しているけど、収入と家族のためだけに働き、自分の欲望を押し殺して生きることで、本当に死ぬ前に満足できるのだろうか。

逆に一生懸命「耐えた」ことを、子供のせいにしたり、家庭のせいにしたりしないだろうか。

この質問に対する答えは明確でした。

・・

・・・

後悔する。

今やらなければ、必ず後悔する日が来る。

その後悔を
「子供を養うため」のせいにしたくはない。
「妻を安心させたい」のせいにしたくない。
「収入の安定のため」のせいにもしたくない。
とにかく自分以外の第3者のせいにしたくない。

そう思い、僕は転職を決断しました。
もちろん決断にあたって、「失敗しても自衛官の再任用制度で戻れば良いや」という計算高い自分もいました。(本当に戻れるのかは知らないけど、自衛隊の定員充足率を知っている側からすれば、1人でも多くの人材が欲しいことは目に見えて分かる。)

ただ、八木が転職を決めた1つの大きな軸は、「死ぬ前に後悔しないか」という軸です。

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